外国語の災害情報は日本で期待できるか?

Japan criticized for lack of foreign-language information during Typhoon Hagibis https://t.co/cfoaoUBONP
— The Japan Times (@japantimes) October 13, 2019
連日台風の話ばかりで恐縮ですが、今回は英語学習よりも大事な話かもしれません。
今回の台風のように、災害時には正確な情報を迅速に入手することが生死の分かれ目になる場合があります。しかし、自治体をはじめ、警察、消防、交通機関も、どれだけ外国語で情報発信したのでしょうか?
残念ながら、今の日本では英語ですら災害情報をタイムラグなしに発信することは無理です。日本の公共機関のどこのEnglish pageを見ても、外注翻訳に出したような定型的な内容のものばかりで、刻一刻と変化する状況を、日本語以外の言語で発信できる状態にはないと思います。
私はこのような機関を責めるつもりはありません。むしろ豪雨や川が氾濫の危険に直面する中で、現場の最前線で安全確保に奔走されたことを労わねばなりません。
日本は英語がコミュニケーション基盤になっている社会ではありません。また、日英の言葉の構造的な違いや、文化的背景の違いがあまりに大きいので、日英の2か国語すら満足に使える日本人は限られている状況です。ですから、専属スタッフがいない限りは外国語対応ができないのです。
一方、交通網の発達やインターネットのおかげで、国際社会はホント狭くなりました。インフラ的には、キーボード一つ叩けば世界の人とコミュニケーションができる状態にあります。
でも、それができる人がこの国にはまだまだ足りていないのです。
私は英語に関する仕事を長年やってきましたが、アメリカをはじめとする外国語や外国文化を盲目的に崇拝しているわけではありません。また、国家や民族の枠を取り払えば世界が平和になるなどとも考えていません。
ただ、日本を取り巻く現実に対応できる人材が必要だと思うのです。
現実が変化するスピードは想像を超えてはるかに速いものです。東京は外国人観光客が本当に増えました。観光客だけでなく、ご近所の住宅地にも、異国の人たちが普通に暮らしている地域が増えました。
彼らが日本社会に同化するまで、こちらが何もせずに待つか。それともこちらも積極的にコミュニケーションの幅を広げていくのか。
諸外国の現実を見れば、答えは明らかでしょう。assimilationではなく、segregationが待っています。いわゆる「島国根性」では、この国の将来は暗いままです。今の出生率では日本人は自然に減っていくのですから、この国を維持していくためには、在留外国人を含めた新たな「日本人像」を模索していかねばなりません。
外国語を習得するには旬があるとは言われますが、志があれば老若男女を問わず、挑戦・継続・発展させていけばよいと思います。国際コミュニケーションの必要性は、もはや「他人事」ではなく、間違いなく私たちにも降りかかってきます。若い方々は自分の世代で必要になるでしょうし、中年以上の方々は子供さんやお孫さんが苦労することになるでしょう。
私個人の力は微々たるものですが、英語というコミュニケーションツールに対してみなさんに少しでも興味を持っていただいて、実用レベルを目指してがんばっていただければ幸いです。NHK語学のお仕事も、そのようなマインドが根本にあるのです。
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